Home

公開日

AI時代を勝ち抜く企業戦略とは?従業員のAI習熟度向上が鍵

img of AI時代を勝ち抜く企業戦略とは?従業員のAI習熟度向上が鍵

近年、ChatGPTをはじめとする生成AIの急速な普及により、ビジネスにおけるAI活用への注目が高まっています。しかし、AIを導入したものの、現場レベルではうまく活用が進んでいないという企業も多いのではないでしょうか。その原因の一つとして、従業員の「AI習熟度」の不足が挙げられます。

AI習熟度とは?5つのタイプと現状

AI習熟度とは、AIを効果的に活用するために必要なスキルや知識のレベルを指します。Section社の「The AI Proficiency Report」では、ナレッジワーカーのAI習熟度を調査し、そのレベルに応じて「AIエキスパート」「AI実践者」「AI実験者」「AI初心者」「AI懐疑派」の5つのタイプに分類しています。

図表1: AIタイプ別の割合

AIタイプ別の割合

この調査によると、高度なAIスキルを持ち、業務に有効活用している「AIエキスパート」は、わずか1%しか存在しません。また、ある程度AIを活用している「AI実践者」を含めても、全体の9%にとどまっています。つまり、多くの企業では、従業員のAI習熟度が不足しており、AIの潜在能力を十分に引き出せていない状況にあると言えるでしょう。

AI習熟度を高める4つの企業戦略

では、企業は従業員のAI習熟度を高め、AI活用を推進するために、どのような戦略をとるべきなのでしょうか。Sectionレポートでは、AI習熟度に影響を与える4つの重要な要因を挙げています。

AIプラットフォームの導入:会社支給のLLMが鍵を握る

1つ目の要因は、AIプラットフォームの導入、特に会社が認可したLLM(大規模言語モデル)の導入状況です。

図表2: 会社のAIプラットフォーム導入状況とAI習熟度の関係

会社のAIプラットフォーム導入状況とAI習熟度の関係

この図表から、会社がAIプラットフォームを導入している場合、従業員がAIエキスパートまたは実践者である割合が高くなることが分かります。会社が認可したLLMへのアクセスを提供することは、従業員のAI習熟度向上に大きく寄与すると言えるでしょう。

明確なAI戦略とポリシーの周知:禁止でも沈黙でもなく、“承認”が重要

2つ目の要因は、企業が明確なAI戦略とポリシーを周知しているかどうかです。

図表3: 企業のAIに対するスタンスとAI習熟度の関係

企業のAIに対するスタンスとAI習熟度の関係

この図表を見ると、AIの利用を明示的に禁止している、またはAIについて言及していない企業よりも、AI利用を承認している企業の方が、AIエキスパートやAI実践者が多いことが分かります。企業としてAI活用を推進する明確な意思を示し、従業員が安心してAIを利用できる環境を整備することが重要です。

管理職への投資:現場の意識改革がAI活用を加速させる

3つ目の要因は、管理職のAIに対する姿勢です。従業員のAI習熟度には、直属の上司のAIに対する考え方が大きく影響します。

図表4: 管理職のAIに対する姿勢と従業員のAI習熟度の関係

管理職のAIに対する姿勢と従業員のAI習熟度の関係

この図表から、管理職がAI利用を推奨している場合、従業員がAIエキスパートまたは実践者である割合が高くなることが分かります。一方、管理職がAI利用を禁止している場合、AI懐疑派の割合が大きく増加します。AI活用を現場レベルで推進するためには、まず管理職の意識改革を行い、AI活用を積極的にサポートする体制を構築することが不可欠です。

実践的なAIトレーニング:知識だけでなく、“使える”スキルを

4つ目の要因は、実践的なAIトレーニングの提供です。AIに関する知識を学ぶだけでなく、実際の業務でAIを活用できるスキルを習得させることが重要です。

図表5: AIトレーニングの有無とAIスキルスコアの関係

AIトレーニングの有無とAIスキルスコアの関係

この図表から、AIトレーニングを受けている従業員は、受けていない従業員に比べて、AI利用のスコアは高いことが分かります。しかし、AI知識とプロンプティングのスコアにおいては、トレーニングの有無による有意な差は見られません。特に、AI知識においては、トレーニングを受けていない従業員の方がわずかに平均スコアが高いという結果になっています。これは、現状のトレーニングが、AIの仕組みや活用方法、リスク対策といった実践的な知識の習得よりも、データセキュリティや基本的なガイドラインの周知など、企業側のポリシーを伝えることに重点が置かれているためと考えられます。今後は、従業員がAIを効果的に活用するために必要な知識やスキルを習得できる、より質の高いトレーニングプログラムへの改善が求められています。

AI習熟度の現状と業界・職種別の傾向

AI習熟度は、業界や職種によっても大きな差が見られます。

言語系業務で先行するAI活用:テック、コンサル、メディア業界が上位

図表6: 業界別のAIタイプ割合

業界別のAIタイプ割合

この図表から、B2Bソフトウェアやコンシューマーテクノロジーといった、いわゆるテック業界で働く人の約20%がAIエキスパートまたは実践者であることが分かります。また、プロフェッショナルサービス・コンサルティング、メディア・エンターテイメント業界でも、AIエキスパート・実践者の割合が他の業界より高くなっています。これらの業界では、報告書作成やデータ分析、コンテンツ制作など、AIが得意とする言語系の業務が多いため、AI活用が進んでいると考えられます。

一方、製造業、ヘルスケア、小売、飲食といった業界では、AIエキスパート・実践者の割合が低く、AI初心者や懐疑派が多い傾向にあります。これらの業界では、AI活用が遅れている、もしくは、AI活用に適した業務が少ない可能性が考えられます。

エンジニア、マーケター、経営企画で高いAI習熟度

図表7: 職種別のAIタイプ割合

職種別のAIタイプ割合

職種別に見ると、エンジニアリング・テック職の約19%がAIエキスパートまたは実践者となっています。また、マーケティング職や経営企画職でも、AIエキスパート・実践者の割合が他の職種より高くなっています。これらの職種では、日常的にデータ分析や資料作成などの業務が多く、AIを活用する場面が多いため、AI習熟度が高いと考えられます。

一方、人事や経理といった管理部門では、AIエキスパート・実践者の割合が低く、AI初心者や懐疑派が多い傾向にあります。これらの部門では、AI活用が進んでいない、もしくは、AI活用に対する意識が低い可能性が考えられます。特に、AI導入を推進する立場にある人事部門のAI習熟度の低さは、企業全体のAI活用を遅らせる要因となる可能性があります。

役職が高いほどAIに精通、大企業と中小企業に大きな差はなし

図表8: 役職別のAIタイプ割合

役職別のAIタイプ割合

役職別に見ると、役職が高いほどAIエキスパート・実践者の割合が高くなる傾向が見られます。これは、役職が高い人ほど、新しい技術への関心が高く、情報収集に積極的であるためと考えられます。また、AI導入の意思決定に関わる立場にあることも、AI習熟度の高さにつながっている可能性があります。

一方、一般社員ではAI初心者や懐疑派の割合が高く、AI活用が進んでいない、もしくは、AIに対する関心が低いことが示唆されます。企業がAI活用を推進するためには、一般社員のAIリテラシー向上も重要な課題と言えるでしょう。

図表9: 企業規模別のAIタイプ割合

企業規模別のAIタイプ割合

企業規模別に見ると、AI習熟度に大きな差は見られません。このことから、AI活用は企業規模に関わらず、どの企業にとっても重要な経営課題であることが分かります。

AI習熟度向上によるメリット

AI習熟度を高めることは、企業にどのようなメリットをもたらすのでしょうか。Sectionレポートでは、時間節約とAIに対する自信の向上という、2つの大きなメリットを挙げています。

最大で週10時間の効率化を実現

図表10: AIタイプ別の時間節約効果

AIタイプ別の時間節約効果

AI習熟度が高い人ほど、AI活用による時間節約効果が大きいことが分かります。特に、AIエキスパートは、1週間あたり平均で10時間以上、業務時間を削減できていると回答しています。AIを効果的に活用することで、業務効率を大幅に改善し、生産性向上につなげることができるのです。

不安や戸惑いを解消し、前向きな活用へ

図表11: AIタイプ別のAIに対する感情

AIタイプ別のAIに対する感情

AI習熟度が高い人ほど、AIに対して肯定的な感情を持っていることが分かります。AIエキスパートや実践者の多くは、AIに対して「興奮」を感じていると回答しています。一方、AI初心者や懐疑派では、「不安」や「圧倒される」といった否定的な感情を持つ人が多い傾向にあります。AI習熟度を高めることは、従業員のAIに対する不安を解消し、前向きな活用を促進することにもつながるのです。

結論: AIネイティブな組織を目指して:Sectionレポートからの提言

Sectionレポートは、多くの企業で従業員のAI習熟度が不足しており、AIの潜在能力を十分に引き出せていない現状を明らかにしています。企業が競争優位を築くためには、従業員のAI習熟度を高め、組織全体でAI活用を推進することが不可欠です。

AI習熟度を高めるためには、以下の4つの戦略が有効です。

  1. AIプラットフォームの導入: 会社が認可したLLMへのアクセスを提供することで、従業員のAI活用を促進する。
  2. 明確なAI戦略とポリシーの周知: AI活用を推進する明確な意思を示し、従業員が安心してAIを利用できる環境を整備する。
  3. 管理職への投資: 管理職の意識改革を行い、AI活用を積極的にサポートする体制を構築する。
  4. 実践的なAIトレーニング: 知識だけでなく、実際の業務でAIを活用できるスキルを習得させる。

これらの戦略を実行し、従業員のAI習熟度を高めることで、企業はAIの恩恵を最大限に享受し、ビジネスの成長を加速させることができるでしょう。今こそ、AIネイティブな組織への変革を目指し、一歩を踏み出す時です。


開発生産性やAI対応にお困りですか? 弊社のサービス は、開発チームが抱える課題を解決し、生産性と幸福度を向上させるための様々なソリューションを提供しています。ぜひお気軽にご相談ください!

参考資料: