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Claude Codeの急拡大:2025年GitHubのコーディングエージェント実態調査

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2025年は、AIによる開発支援が「コード補完」から「自律的なタスク実行」へと大きくシフトした転換点となりました。従来のツールが数行のコードを提案するだけだったのに対し、最新の「コーディングエージェント」は、開発者の指示に基づいてリポジトリ全体を探索し、自律的に修正を行い、プルリクエストの作成までを担うようになっています。

本記事では、Robbesらが2026年に発表した論文「Agentic Much? Adoption of Coding Agents on GitHub」に基づき、急速に普及するコーディングエージェントの実態と、それがソフトウェア開発に与えている具体的な影響について解説します。

コーディングエージェントとは:補完から自律へ

本調査において「コーディングエージェント」とは、単にコードを補完するLLM(大規模言語モデル)ではなく、ツールへのアクセス権を持ち、目標達成のために自律的なループ(Agentic Loop)を実行するシステムを指します。これらは、開発者が提供したタスク記述に基づき、コンパイルエラーの修正やテストの実行、ファイルの編集などを自律的に繰り返します。

これまでのCopilotのような補完機能とは異なり、エージェントは設定ファイル(例:.cursorrulesAGENTS.md)や、コミットの共著者情報(Co-authored-by)など、リポジトリ内に明確な痕跡を残す傾向があります。本調査ではこれらの痕跡を利用して、エージェントの利用状況を定量化しています。

調査対象と普及の実態:2025年に急拡大

本調査は、GitHub上の全プロジェクトから、スター数10以上、フォークではない、5,000行以上のコードを有し、かつ直近3ヶ月以内に活動が見られる129,134件のプロジェクトを厳選し、2025年1月から10月までの期間で実施されました。

このように一定の規模と成熟度を持つプロジェクト群を分析した結果、コーディングエージェントの導入は極めて急速に進んでいることが判明しました。2025年10月末時点での推計において、全プロジェクトの 約15.85%から、最大で22.60% が何らかの形でコーディングエージェントを利用していると見積もられています。

2024年時点では極めて限定的だった利用が、2025年の春以降、ツールの進化とともに爆発的に普及したことがデータから読み取れます。

導入が進むプロジェクトの特徴:若さと規模のパラドックス

では、具体的にどのようなプロジェクトでエージェントが使われているのでしょうか。プロジェクトの「年齢」や「規模」と導入率の関係を分析すると、興味深い傾向が見えてきました。

以下の表は、プロジェクトの各指標(規模、経過年数など)を10段階(デシル)に分け、それぞれの導入率を示したものです。

表3:プロジェクトレベルの指標とファイルベースの導入率(抜粋)

指標D1 (最小)D5 (中間)D10 (最大)
LOC (行数)4.66%(5,000行)7.74%(21,000行)10.00%(329,000行)
Contributors (貢献者)7.22%(0人)7.06%(6人)11.02%(69人)
Commits (コミット数)7.71%(100回)7.03%(448回)11.72%(4,000回)
Age (経過年数)21.17%(0年)6.31%(4年)4.69%(11年)

※表中の数値は、各デシル(区分)における導入率を示します(括弧内は各デシルのしきい値)。

このデータからは、以下の2つの対照的なトレンドが読み取れます。

  1. 「若い」プロジェクトほど導入率が高い(Ageの行) プロジェクトの年齢が若いほど導入率は高く、開始から1年以内のプロジェクト(D1)では 21.17% という極めて高い数値を記録しています。これは、エージェントが新規開発において最も導入しやすいことを示唆しています。
  2. 「大規模」なプロジェクトでも導入が進んでいる(LOCの行) 一般的にAIツールは小規模な実験的プロジェクトで使われがちですが、コード行数(LOC)が多い大規模プロジェクト(D10:32.9万行以上)においても、導入率は 10.00% と、小規模プロジェクト(D1:5000行程度)の倍近い数値を示しています。コントリビューター数やコミット数が多いプロジェクトでも同様の傾向があり、活発で大規模なプロジェクトほど、開発効率化のためにエージェントを取り入れている実態が浮かび上がります。

主要ツールのシェア争い:Claude Codeの独走

2025年を通じて、どのツールが支持を集めたのでしょうか。データの分析によると、2025年3月頃から導入数が急増しており、特に春以降にリリースされた主要エージェントが市場を牽引しています。

以下の図は、主要な48ツールの導入数の推移を示したものです。「Claude Code」が最も多くのプロジェクトで採用されており、次いで「Copilot」、「Generic(Codex等で使用されるAGENTS.mdを含む)」が続いています。

図表2:トップ48ツールの採用パターンを示すリッジラインプロット

図表2:トップ48ツールの採用パターンを示すリッジラインプロット

このデータから、特定のツールへの集中が見られる一方で、1つのプロジェクトで複数のエージェントを併用するケースも少なくないことがわかっています。

AIコミットの特性:人間より「大きく」、そして「破壊的」

エージェントが生成するコードには、人間が書くコードとは異なる特徴があるのでしょうか。コミットのサイズ(追加・削除された行数やファイル数)を比較分析した結果、AIが関与したコミットは、人間のみによるコミットよりも規模が大きい傾向があることがわかりました。

以下の図は、人間(Human)、AI支援(AI Assisted)それぞれのコミットにおける、変更行数やファイル数の頻度分布を比較したものです。

図表3:人間によるコミットとAI支援によるコミットのサイズカテゴリ別頻度比較

図表3:人間によるコミットとAI支援によるコミットのサイズカテゴリ別頻度比較

具体的には、AI支援によるコミットは、数行の修正といった小規模な作業よりも、多くのファイルにまたがる変更や、数百行単位のコード追加において頻繁に利用されています。また、コードの「削除」においてもAIの活動量は多く、コードベースに対する変更が多くなる傾向が読み取れます。これは、エージェントが既存のコードを大胆に書き換えるリファクタリングや、大規模な機能実装に用いられていることを示唆しています。

エージェントの主な仕事:機能開発の主力へ

実際にエージェントはどのようなタスクを任されているのでしょうか。最も普及している「Claude Code」によって生成されたコミットをランダムに抽出し、コミットメッセージに付与されている Conventional Commits に基づいて分類した結果が以下の通りです。

図表4:Claude Codeと共著された790コミットのランダムサンプルのタイプ分類

TypeCountRatio (%)
feat (新機能)28235.7%
fix (バグ修正)23629.9%
docs (ドキュメント)8610.9%
refactor (リファクタリング)789.9%
chore (雑務)567.1%
test (テスト)435.4%
style (スタイル修正)91.1%

人間によるコミットを分析した先行研究では、ビルド設定などの雑務(chore)が最も多く(約31%)、次いで修正(fix)が多いという結果でしたが、エージェントの場合は新機能の実装(feat)が約36%と最も多くなっています。これは、開発者がエージェントを単なる「コードの自動修正ツール」としてではなく、「新しい機能を実装するためのパートナー」として積極的に活用している実態を裏付けています。

結論

本調査は、2025年においてコーディングエージェントが実験的なツールから実用的な開発パートナーへと急速に進化したことを示しています。

特に注目すべきは、 新規プロジェクトでの圧倒的な導入率(約21%) に加え、大規模プロジェクトにおいても高い利用率を示している点です。これは、AIエージェントが「立ち上げ時の加速」だけでなく、「複雑なコードベースの保守・拡張」にも貢献できるポテンシャルを持っていることを示唆しています。

一方で、エージェントによる変更は人間よりも規模が大きく、コードの削除も頻繁に行う傾向があります。開発速度の向上が期待できる反面、ブラックボックス化したコードが増えるリスクも孕んでおり、今後はエージェントが生成した大規模な変更を人間がいかに効率的にレビューし、品質を管理していくかが重要な課題となるでしょう。


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参考資料:

Author: vonxai編集部

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