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開発生産性を高める目標設定フレームワーク:Googleの最新研究で目標測定の重要性を解説

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開発チームの生産性向上は、あらゆるIT企業の最重要課題です。しかし、何をどのように測定すれば、本当に効果的な改善につながるのでしょうか?Googleの最新の研究では、開発者の目標測定 こそが鍵であると示されています。適切な目標設定と測定は、開発者体験(DX)の向上、ひいては生産性向上に直結します。本記事では、Googleのレポート「Measuring Developer Goals」に基づき、開発生産性を最大化するための目標設定フレームワーク、具体的な測定方法、そして実践的なヒントをご紹介します。

開発者目標測定の価値:なぜ重要なのか?

Googleは長年、Critical User Journeys (CUJ) を用いてユーザー中心の製品開発を行ってきました。CUJとは、ユーザーが誰で、どのような目標を持ち、その目標達成のためにどのようなタスクを行うかを明確にするフレームワークです。このCUJの考え方を開発者体験にも適用することで、開発者の真のニーズを捉え、効果的なツールやインフラストラクチャを提供することが可能になります。

従来の開発プロセスでは、タスクベースのメトリクス(例:タスク完了までの時間、エラー数)に注目しがちでした。しかし、これだけでは開発者の本当の課題やボトルネックを捉えきれません。目標ベースの測定では、開発者が なぜ そのタスクを行っているのか、 どのような目標 を達成しようとしているのか、というコンテキストを理解することが重要になります。これにより、開発プロセス全体の最適化、ひいては生産性向上に繋がるのです。

Googleが提唱する目標設定フレームワーク

Googleの研究では、開発者の目標を以下の6つのフェーズに分類しています。それぞれのフェーズに紐づく具体的な目標例も示します。

フェーズ目標例
情報収集ドキュメントの最新情報の確認、作業項目完了のためのコンテキスト理解、技術的解決策の調査(例:バグ修正、設計)、情報検索(例:ドキュメント、Codelab、APIサンプル)、専門家の特定
作業計画と承認管理次の作業の把握、同僚との連携、ローンチ要件の法的/プライバシー/セキュリティ準拠確認、チーム全体のローンチ準備状況の調整、設計承認取得、計画の設計と文書化
開発・テスト・コミット高品質なコード作成、他者(チームメイト、AIペアプログラミングなど)によるコードの品質保証、既存コードの動作理解、包括的なテストカバレッジの作成と維持、ローカルでの予期しない動作の調査、新しいツール/技術の既存サービス/システムへの統合
実験・リリース・ロールアウト本番環境への変更の安全なロールアウト(例:新機能、モデル、新リリース)、実験の実行、実験結果の分析
監視・信頼性・インフラ設定製品のSLO (Service Level Objective - サービスレベル目標) コミットメント内への維持、本番環境での問題調査(例:クラッシュ、停止、予期しない動作)、システムパフォーマンスの改善、計算リソースの管理、ビルドの正常性の維持(例:ビルドガーデニングローテーション)、信頼性の向上と本番環境での問題回避
データ管理担当データの鮮度・信頼性・高品質の確保、データ処理パイプラインの開発と管理、担当データのセキュリティと規制準拠の確保、データの分析・視覚化・理解によるインサイト生成

目標測定の実践方法: 感情データと行動データの活用

Googleの研究では、目標達成度に関する 感情データ と、開発ツール利用状況に関する 行動データ を組み合わせることで、より深い洞察を得られると提唱しています。

  • 感情データ: 定期的なアンケート調査(例: GoogleのEngSat)を通じて、開発者が各目標に対してどれくらいサポートされていると感じているか、課題に感じている点などを測定します。
  • 行動データ: 開発ツール、バージョン管理システム、コミュニケーションツールなどからログデータを収集し、開発者の行動パターンを分析します。例えば、コードレビューの頻度、所要時間、バグ修正にかかった時間などを計測します。

これらのデータを組み合わせることで、例えば「高品質なコード作成」という目標に対して、満足度の高い開発者とそうでない開発者の行動の違いを分析し、具体的な改善策を検討することができます。例えば、高品質なコードを作成できていると感じる開発者は、特定のツールを頻繁に使っている、あるいはコードレビューの時間が長いといった傾向が見られるかもしれません。

感情データと行動データの相関関係分析例

コードレビュー完了に関するログベースの行動測定と、その目標に対する満足度調査の結果の相関

まとめ: 開発者目標測定で生産性向上を実現

開発者目標測定は、開発者体験と生産性を向上させるための重要な取り組みです。Googleの研究で示されたフレームワークと測定方法を参考に、開発チームの目標設定とパフォーマンス評価を見直し、データに基づいた改善を行いましょう。 Googleが6年間実施した開発者満足度調査について も必読です。


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参考資料: