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データスペース活用でビジネス変革を!IPAがガイドブック公開、データ駆動型イノベーションを推進

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現代社会において、データはビジネスの成功に不可欠な資産です。しかし、その効果的な利活用は容易ではありません。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)は、データスペース活用を支援するためのガイドブック「データ利活用・データスペース ガイドブック 第1.0版」を公開しました。データ主権の保護や業界間のデータ共有促進のニーズが高まる中、データスペースはイノベーション創出と競争力強化の鍵となります。本記事では、このガイドブックを基に、データスペースの基礎から活用手順、成功のポイント、そして今後の展望までを分かりやすく解説します。

背景:データ活用後進国日本の現状打破へ

日本はデジタルトランスフォーメーション(DX)推進が叫ばれているものの、データ活用は他国に比べて遅れており、データ駆動型イノベーションが活発化していません。IPAもこの課題を認識し、データスペースの推進に力を入れています。

主な課題は、

  • 相互運用性の課題: 企業内や限定的な企業間でのデータ共有は進んでいる一方、国や業界を跨いでのデータ共有は不十分。
  • データ主権の課題: 欧州のようにデータ主権を守るための統一的な仕組みが未整備。
  • データ活用人材の課題: データを戦略的に活用できる人材が不足。

これらの課題解決策として、データスペースが注目されています。

データスペースとは?

データスペースとは、異なる組織間で安全かつ円滑にデータを共有・流通させるための仕組みです。特定の業界や分野に特化したデータスペースも存在し、参加者はデータ提供者とデータ利用者に分かれます。データ提供者はデータをデータスペースに提供し、データ利用者はデータスペースから必要なデータを取得・活用します。これにより、新たなビジネスモデルの創出や既存事業の効率化などが期待されます。

ガイドブック概要:8つのフェーズでデータスペース活用を徹底解説

ガイドブックでは、データスペース活用を8つのフェーズに分け、経営戦略策定から運用・評価までを網羅的に解説しています。各フェーズでデータ利用者が取り組むべきタスクを明確化し、実践的なガイダンスを提供しています。下記の図は、データスペース活用における全体プロセスを示したものです。

全体プロセス

  1. 経営戦略策定フェーズ: 会社のビジョン・方針策定、データ活用組織の整備(CDO:最高データ責任者 の設置など)。
  2. IT戦略・企画策定フェーズ: データ利用企画の立案、収集データの検討。
  3. データ提供準備フェーズ: データ提供者側がデータを準備するフェーズ。(近日公開予定のガイドブック「データ提供者編」で解説)
  4. データ検索フェーズ: データカタログサイトなどを活用したデータ検索、取得判断。データ品質の重要性も解説。
  5. 契約フェーズ: データスペースへの参加、データ提供元との契約締結。データ取引市場の活用についても言及。
  6. データ利用アプリケーション開発フェーズ: データ計画・設計、データスペース連携機能の実装、アプリケーション開発・テスト・本番稼働。
  7. 運用フェーズ: 認証・認可によるデータ取得、アプリケーション活用、来歴確認。データガバナンスの遵守とフィードバックも重要。
  8. 評価フェーズ: データ戦略の達成度、データガバナンス効果、データ品質、セキュリティ状況などを評価し、改善策を検討。

データ活用のための環境整備

IPA発行の「 DX実践手引書 」では、データ活用基盤を中心としたデータ活用の流れが示されています。下記の図はデータマネジメント機能の全体構成を示したものです。データマネジメント機能を理解し、適切なデータガバナンス体制を構築することが重要です。

データマネジメント機能の全体構成

データ品質の重要性

データ検索フェーズでは、データの品質を見極めることが重要です。下記の表に、品質の良いデータが持つ特性をまとめました。

No.品質評価軸説明
1正確性 (Accuracy)意図した概念や事象を、データがどの程度正しく表現できているか。
2完全性 (Completeness)対象となるデータが、必要な範囲をどの程度カバーしているか。
3一貫性 (Consistency)複数のデータ間で矛盾がなく、整合性が取れているか。
4信憑性 (Credibility)データの内容の正しさが、どの程度信頼できるか。
5最新性 (Correctness)データが、どの程度現実の変化に追随できているか。
6アクセシビリティ (Accessibility)どの程度、データにアクセスできるか。
7標準適合性 (Compliance)データが、法令や各種基準にどの程度適合しているか。
8機密性 (Confidentiality)データ利用が、どの程度正当な利用者にのみ限られているか。
9効率性 (Efficiency)データの取扱いにおいて、システム上のリソースをどの程度効率的に利用しているか。
10精度 (Precision)データはどの程度精密か。
11追跡可能性 (Traceability)データへのアクセスや変更をどの程度まで追跡できるか。
12理解性 (Understandability)データの内容がどの程度容易に判読・理解できるか。
13可用性 (Availability)データを利用したいときにどの程度の割合で利用できるか。
14移植性 (Portability)データがどの程度異なるプラットフォームや組織を越えて実装・移動できるか。
15回復性 (Recoverability)システムにトラブルが生じたとき、どの程度本来のデータを回復できるか。

データスペース活用成功のポイント

  • データガバナンスの確立: データ活用に関するルールやポリシーを明確化し、組織全体で遵守することで、データの一貫性と信頼性を確保します。
  • データ品質の確保: 上記の表の品質評価軸を参考に、データの正確性、完全性、一貫性などを確保することで、信頼できる分析結果を得ることができます。
  • セキュリティ対策: データへの不正アクセスや漏洩を防ぐため、適切なセキュリティ対策を実施することが不可欠です。
  • 人材育成: データリテラシー向上のための研修を実施し、データ活用人材を育成することで、データスペースの効果的な活用を促進します。

欧米におけるデータスペースの動向と課題

欧州では、データ主権の確保やGDPRへの対応を背景に、データスペースの構築が積極的に進められています。GAIA-Xなどのプロジェクトが進行中で、官民連携でのデータスペース構築が進んでいます。一方、米国では民間企業主導でデータスペースが発展しており、データポータビリティの確保などが課題となっています。

日本におけるデータスペースの展望

日本でも、政府がデータスペースの構築を支援しており、今後ますますの発展が期待されます。データ利活用を促進することで、新たなイノベーションの創出や経済活性化に繋がる可能性があります。今後の動向に注目しましょう。

まとめ

データスペースは、データ駆動型社会を実現するための重要な基盤技術です。IPA発行のガイドブックと本記事を参考に、データスペースの効果的な活用方法を理解し、ビジネス変革を推進しましょう。


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参考資料: