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開発者の76%がAI活用も、現場は混乱?期待と不安が交錯する開発現場のリアル~Stack Overflow調査2024
世界中の開発者から約6.5万人が回答したStack Overflow Developer Survey 2024から、2024年の開発現場のリアルが見えてきました。 AIの台頭によって開発環境は大きな変革期を迎え、光と影がくっきりと表れています。76%もの開発者がすでにAIツールを導入済み、もしくは導入を検討している一方で、AIが出力するコードの精度に対する不信感や倫理的な問題への懸念など、現場からは戸惑いの声も上がっています。
はたしてAIは、開発者を待ち受ける未来を明るく照らす光となるのでしょうか?それとも、新たな課題を生み出す影となるのでしょうか?
本記事では、AI導入によって期待される「光」の部分と、懸念される「影」の部分、そして、AI時代における開発者の生産性と満足度について考察していきます。
開発現場に押し寄せるAIの波:76%が活用、その目的は「生産性向上」
AIツールはすでに開発現場に浸透しつつあり、その勢いはとどまるところを知りません。76%もの開発者がすでにAIツールを導入済み、もしくは導入を検討しており、多くの開発者はAIツールが開発者の仕事をより楽なものにしてくれると期待を寄せています。
AIツールに期待することとして最も多いのは「生産性の向上(81%)」です。AIが面倒な作業を自動化してくれる、あるいは、より効率的な開発プロセスを実現してくれることを期待し、すでにコードの記述 (82%) や 回答の検索 (67.5%)、デバッグ (56.7%) といったタスクに活用されています。
AIは開発者の脅威? 7割の開発者は「AIは仕事を奪わない」と回答
AI技術の急速な発展に伴い、「AIは人間の仕事を奪うのではないか?」という不安の声も聞かれるようになりました。しかし、今回の調査では、AIによって仕事を奪われるという不安を抱えている開発者は少ない ことが分かりました。
「AIはあなたの現在の仕事にとって脅威だと思いますか?」という質問に対しては、「No(いいえ)」と回答した開発者が68.3%と大多数を占めています。AIはあくまでも開発者を支援するツールであり、人間の開発者に取って代わるものではないと考えている開発者が多いようです。
AI導入で現場は混乱? 期待と不安のリアルな声
AIは開発者の仕事を楽にする可能性を秘めている一方で、AI導入によって新たな課題や混乱が生じているのも事実です。ここでは、AI導入によって生まれた光と影について、開発者たちのリアルな声を紹介します。
1. AI出力の精度に対する不信感:半数以上が「信頼していない」
「AIツールの出力の精度について、どの程度信頼していますか?」という質問に対し、「あまり信頼していない」と回答した開発者は22.5%、「全く信頼していない」と回答した開発者は7.9%、「信頼も不信もしていない」と回答した開発者は26.6%にのぼり、合わせて57%の開発者がAI出力の精度に不信感を持っていることが明らかになりました。
AIが出力したコードをそのまま信用して良いのか、それとも人間がチェックする必要があるのか、判断に迷うケースも多いのではないでしょうか?このような状況は、開発プロセスにおける混乱を招き、作業効率の低下や、品質の低下につながる可能性も孕んでいます。
2. AI倫理をめぐる混乱:何が正しくて、何が間違っているのか?
AI技術の急速な発展に伴い、AI倫理に関する議論も活発化しています。開発者たちが最も懸念しているAI倫理的問題は、「誤情報や偽情報の拡散(79.4%)」です。AIによって生成された情報が、真実であるという保証はどこにもなく、悪意を持って利用された場合には、社会に大きな混乱をもたらす可能性も孕んでいます。 AI技術の利用には、慎重な判断と倫理的な配慮が必要不可欠であることが改めて浮き彫りになりました。
深刻化する「技術的負債」と「知識のサイロ化」問題:AI導入で状況はさらに悪化?
AI導入以前から、開発現場を悩ませ続けているのが「技術的負債」と「知識のサイロ化」問題です。これらの問題の深刻さを改めて示す結果となりました。
- 「技術的負債の量」がフラストレーションを感じる課題だと回答した開発者:62.4%
- 週に10回以上も「知識のサイロ化」に直面していると回答した開発者:29.6%
AI導入によって、これらの問題はさらに深刻化する可能性があります。AIが出力するコードの品質問題や、AIツールに関する知識の偏りなどが懸念材料として挙げられます。
給与の低下、低い満足度…AI時代、開発者を支えるものは?
世界的な経済不安の影響もあり、多くの開発者が給与の低下を実感しています。前年と比較して給与が1万ドル以上も減少したという回答が数多く寄せられました。
厳しい経済状況に加えて、技術的負債や知識共有の問題、そしてAI導入による混乱など、開発者をとりまく環境は厳しさを増すばかりです。
こうした状況下で、開発者のモチベーションを維持していくためには、開発環境の改善やスキルアップの機会提供など、企業側の積極的な取り組みが不可欠と言えるでしょう。
まとめ:AI は「光」か「影」か?開発現場の未来を左右するのは、私たち自身
AIは、正しく活用すれば、開発者の生産性を飛躍的に向上させる可能性を秘めています。一方で、AIの導入は、新たな混乱や課題を生み出す可能性も孕んでおり、その行く末は予断を許しません。AI時代においても、開発者にとって最も重要なのは、常に学び続け、変化に対応していくことなのかもしれません。
【開発生産性50%UPも】AIツール導入を成功させる3つの戦略:個人と組織の「見えない壁」を突破せよ では、AIツール導入の障壁と、障壁を突破するための3つの戦略を紹介しています。こちらの記事を読んで現場の不安を解消しましょう。
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