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コーディング対策だけじゃ不安?131人の調査データが明かす就活生のホンネ

多くのソフトウェアエンジニア候補生が、技術面接の準備としてコーディング問題サイト「LeetCode」に膨大な時間を費やしています。しかし、「このやり方で本当に内定に近づいているのだろうか」「面接本番でうまく話せるだろうか」といった不安を抱えてはいないでしょうか。実はその不安、あなただけが感じているものではありません。
本記事では、米バージニア工科大学の研究者らが発表した論文「How do Software Engineering Candidates Prepare for Technical Interviews?」(2025年)に基づき、エンジニア求職者のリアルなデータから、本当に効果のある技術面接の準備方法を科学的に解き明かしていきます。
あなただけじゃない!6割が抱える技術面接準備の「リアルな不安」
技術面接の準備は、孤独で先の見えない戦いのように感じられるかもしれません。しかし、その悩みはあなた一人だけのものではありません。 実際に、技術面接対策サイトの利用者や就職活動中の学生など131人を対象とした調査から、多くの候補者が抱える「リアルな不安」が浮き彫りになりました。まずは、その実態から見ていきましょう。
主な準備は「YouTube」と「LeetCode」での独学
調査によると、候補者が最も頻繁に利用している準備リソースは「 YouTube 」、僅差で「 LeetCode 」、「 GeeksforGeeks 」と続きました。これらは無料で手軽に始められるため、多くの候補者が一人で黙々とコーディング問題を解いたり、解説動画を視聴したりして学習を進めているのが一般的なスタイルのようです。
図表1:準備リソースの使用頻度
広すぎる学習範囲と時間のなさが不安を加速させる
こうした準備を進める中で、調査対象者の約6割(58.8%)が不安を感じていると回答しました。その原因を深掘りすると、「学習すべきトピックが多すぎる」「面接で何が問われるか分からない」という知識面の広範さからくるプレッシャーが最も大きいことが分かります。次いで、「準備と学業・仕事の両立が難しい」という時間的な制約が、多くの候補者を悩ませています。
図表2:技術面接準備における不安の原因(複数回答可)
不安の原因 | 回答者数 (人) |
---|---|
学習すべきトピックが多すぎる | 73 |
何が質問されるか分からない | 73 |
準備と他の活動(学業・仕事など)との両立 | 69 |
過去の面接での失敗経験 | 52 |
大学での準備が不十分だった | 43 |
その他 | 70 |
特にない | 8 |
技術面接の準備における不安の原因を尋ねた調査結果の表。「学習トピックの多さ」「何が問われるか不明」が上位を占める。
その不安、練習方法が原因かも?データが示す「量」と「自信」の意外な関係
「もっと時間をかければ、もっと問題を解けば、この不安は解消されるはずだ」——。多くの人がそう信じて練習に励みます。しかし、調査データは、その常識に「待った」をかける衝撃的な事実を明らかにしました。
驚きの事実:練習「量」と「準備OK」感は比例しない
意外なことに、1週間に費やす学習時間や、1日に解くLeetCodeの問題数を増やしても、それが「自分は準備万端だ」という自信には統計的に結びついていないことが判明したのです。つまり、がむしゃらに量をこなすだけでは、不安の根本的な解消には繋がりにくいと言えます。
本番を想定しない練習では自信はつかない
この自信の欠如を裏付けるかのように、多くの候補者が本番を想定した練習を避けている実態も明らかになりました。例えば、他者と模擬面接を行った経験がある候補者は非常に少なく、調査対象の35%は一度も経験がないと回答しています。ほとんどの候補者が、一人で静かに問題を解くことに終始しており、本番さながらの「人前で話す」という環境での練習不足が、自信を持てない大きな一因となっている可能性が示唆されます。
図表3:模擬面接の実施回数
候補者が経験した模擬面接の回数を示す棒グラフ。約35%を占める46人が「0回」と回答している。
自信を持って面接に臨むための「たった2つ」の習慣
では、本当に効果のある準備方法とは何なのでしょうか。データが指し示したのは、練習の「量」ではなく「質」、特に「対話」を意識した2つのシンプルな習慣でした。
習慣1:思考を「声に出す」コミュニケーション練習
調査結果で、「自分は準備万端だ」という自信と最も強い相関があったのは、「コミュニケーションスキルの練習を頻繁に行うこと」でした。これは、問題を解きながら自分の思考プロセスを声に出して説明する練習を指します。この練習こそが、頭の中の考えを整理し、自信を育む上で極めて重要なのです。
習慣2:「他者と話す」模擬面接
次に強い相関が見られたのが、「他者と一緒に準備すること」でした。友人やメンターと模擬面接を行うことで、自分では気づけない癖や改善点を客観的に指摘してもらえます。それだけでなく、人前で話すことへの心理的なハードルが下がり、本番でのパフォーマンス向上と揺るぎない自信に直結するのです。
図表4:準備度と各種準備方法の相関分析結果
準備方法 | 準備度との相関 |
---|---|
コミュニケーション練習(頻繁に実施) | 有意に高い(p=0.0222) |
他者との練習(実施する) | 有意に高い(p=0.0256) |
1週間の学習時間 | 有意な相関なし |
1日のLeetCode練習量 | 有意な相関なし |
この結果は明確です。合格への最短ルートは、孤独に問題数をこなすことではなく、他者との対話を通じて思考をアウトプットする練習にあるのです。
大学の授業は面接対策になる?学生が感じている教育とのギャップ
ところで、多くの学生が多くの時間を費やしている大学の授業は、この厳しい技術面接の準備に役立つのでしょうか。残念ながら、ここにも理想と現実のギャップが存在するようです。
約半数が「大学の授業は役に立たない」と回答
驚くべきことに、調査対象者の約半数(48.9%)が「大学の授業は技術面接の準備に役立たない」と感じていることが分かりました。特に、面接で頻出するはずの「データ構造」や「アルゴリズム」といった専門科目の授業でさえ、実践的な問題解決能力に結びついていないと感じる学生が多数派を占めています。
図表5:大学の授業が技術面接の概念習得に役立ったか
概念 | 強くそう思わない | そう思わない | どちらでもない | そう思う | 強くそう思う |
---|---|---|---|---|---|
データ構造 | 31 | 31 | 37 | 31 | 14 |
アルゴリズム | 30 | 27 | 41 | 27 | 13 |
時間/空間計算量 | 24 | 30 | 39 | 30 | 19 |
大学の授業が技術面接の概念習得に役立ったかを示す表。「データ構造」「アルゴリズム」の授業でさえ、否定的な回答が多い。
学生が本当に求めているのは「何を学ぶべきか」の道しるべ
その一方で、「大学が構造化された学習計画を提供してくれれば助かった」と考える候補者は6割以上(61.1%)にのぼりました。これは、断片的な知識の提供ではなく、面接突破という明確なゴールに向けて「何を」「どの順番で」学ぶべきか、その体系的な道しるべが教育現場に強く求められていることを示しています。
図表6:大学提供の構造化された学習ガイドへの期待度
回答 | 強くそう思わない | そう思わない | どちらでもない | そう思う | 強くそう思う |
---|---|---|---|---|---|
回答者数 (割合) | 14(10.7%) | 12(9.2%) | 25(19.1%) | 30(22.9%) | 50(38.2%) |
大学が提供する構造化された学習ガイドへの期待度を示す表。6割以上が肯定的。
まとめ:明日から始めるべき、科学的根拠に基づく技術面接対策
今回の131人の調査データから、ソフトウェアエンジニアの技術面接準備における、成功への道筋がはっきりと見えてきました。
- 練習のゴールを見直しましょう。 ゴールは「問題をたくさん解くこと」ではありません。「一つの問題を、その思考プロセスを含めて、誰かに分かりやすく説明できること」です。
- 孤独な練習から脱却しましょう。 週に一度でも良いので、友人と時間を決めて模擬面接を行ったり、自分の解答を声に出して録音し、後から聞き返してみたりしましょう。
- 練習の「量」より「対話」を重視しましょう。 LeetCodeを10問解く時間があるなら、3問に絞り、それぞれの解法を声に出して説明する練習に時間を使いましょう。その方が、はるかに自信に繋がり、合格の可能性を高めます。
技術面接は、単なるコーディング能力のテストではありません。将来、あなたがチームの一員として円滑に協業できるかを見るための「対話能力」「問題解決能力」のテストでもあるのです。本記事で紹介した科学的データに基づき、ぜひ今日からあなたの練習方法を見直し、自信を持って本番に臨んでください。
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参考資料: