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製造業の未来はAIが守る?産業用サイバーセキュリティの新常識 - 調査で明らかになったAI活用の効果

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近年、製造業において、生産性向上や業務効率化を目的にAI(人工知能)の導入が進められています。その流れは、工場やプラントなどの産業用制御システム(Operational Technology)をサイバー攻撃から守る、産業用サイバーセキュリティの分野にも及ぼしています。

本記事では、Takepoint Researchが2024年7月から8月にかけて実施した調査レポート「AI Integration and its Outlook in Industrial Cybersecurity」に基づき、産業用サイバーセキュリティにおけるAI活用の現状、メリット、課題、そして今後の展望について詳しく解説します。

産業用サイバーセキュリティで進むAI活用 - 主な適用分野とメリット

AIは脅威検知、ネットワーク監視、脆弱性管理で活躍

本調査によると、産業用サイバーセキュリティにおいて、AIは主に以下の分野で活用されています。

  • 脅威検知: ネットワークトラフィックやシステムログなどのデータをAIで分析し、マルウェア感染や不正アクセスなどのサイバー攻撃の兆候を早期に検知します。
  • ネットワーク監視: ネットワーク全体のトラフィックをリアルタイムで監視し、異常な通信パターンや不審な挙動を検出します。
  • 脆弱性管理: システムやソフトウェアの脆弱性を自動的に検出し、優先順位付けや対策を支援します。

下図は、具体的なAIの適用分野を示しています。脅威検知(64%)、ネットワーク監視(52%)、脆弱性管理(48%)が上位を占めており、これらの分野でAIの導入が進んでいることが分かります。

産業用サイバーセキュリティにおけるAIの適用分野 産業用サイバーセキュリティにおけるAIの適用分野

運用効率向上とインシデント対応迅速化に貢献

AIの導入は、セキュリティ担当者の業務負担を軽減し、運用効率を大幅に向上させます。従来、人手に頼っていた脅威の監視や分析をAIが自動化することで、担当者はより高度な業務に集中できるようになります。

また、AIはインシデント対応の迅速化にも貢献します。AIがサイバー攻撃の兆候を早期に検知し、自動的に対応することで、被害の拡大を防ぎ、事業継続性を確保します。

下図は、AI導入によるメリットを示しています。最も多くの回答者が「脅威検知の改善」(60%)を挙げており、次いで「運用効率の向上」(51%)となっています。

産業用サイバーセキュリティにおけるAI導入のメリット 産業用サイバーセキュリティにおけるAI導入のメリット

AI導入の課題とリスク - 既存システムとの統合、データ品質、スキル不足が障壁に

AIシステムへの過度な依存や改ざん、誤検知のリスク

産業用サイバーセキュリティへのAI導入は多くのメリットをもたらしますが、同時にいくつかの課題やリスクも存在します。

Takepoint Researchの調査では、AI導入における課題として、以下の点が指摘されています。

  • 既存システムとの統合: 既存のOT環境(工場やプラントなどで使われている制御システム)は、レガシーシステムが多く、AIとの連携が難しい場合があります。
  • データ品質: AIの性能は、学習データの質に大きく左右されます。産業用システムから得られるデータは、ノイズが多い、不均衡であるなどの問題があり、AIの学習を妨げる可能性があります。
  • スキル不足: AIを導入・運用するためには、AIに関する専門知識やスキルを持つ人材が必要です。しかし、そのような人材は不足しており、AI導入の障壁となっています。

下図は、AI導入における課題を示しています。最も多かった回答は「既存システムとの統合」(68%)であり、次いで「データ品質の問題」(56%)、「スキルを持つ人材の不足」(40%)となっています。

産業用サイバーセキュリティへのAI導入における課題 産業用サイバーセキュリティへのAI導入における課題

データプライバシーに関する懸念も

AIは大量のデータを学習・分析するため、データプライバシーに関する懸念も生じます。特に、産業用システムから収集されるデータには、機密情報や個人情報が含まれる可能性があるため、適切な管理が必要です。

AIを安全に活用するには? - セキュリティ対策、倫理、人間による監視が重要

AIシステム自体のセキュリティ対策を強化

AIシステム自体がサイバー攻撃の標的となる可能性も考慮しなければなりません。AIモデルの改ざんや、AIを欺くような攻撃(敵対的サンプル攻撃)など、AI特有の脆弱性に対処する必要があります。

倫理ガイドラインを策定し、責任あるAI利用を

AIの利用は倫理的な問題も提起します。AIの判断に偏りがないか、データの扱いは適切かなどを組織として明確にルールを定める必要があります。

人間の監視体制を構築し、AIの判断を適切に監督

AIはあくまでツールであり、最終的な判断は人間が行うべきです。AIの判断を鵜呑みにせず、必ず人間が監視・確認する体制を構築することが重要です。AIの判断に疑問がある場合は、人間が介入し、適切な対応を取る必要があります。

下図は、産業用分野でのAI利用で考えられる懸念点についてです。最も多かった回答は、「AIへの過度な依存」(68%)であり、次いで「AIシステムの操作」(52%)、「誤検知・見逃し」(48%)と続きました。

産業用サイバーセキュリティにおけるAI利用に関する懸念 産業用サイバーセキュリティにおけるAI利用に関する懸念

産業用サイバーセキュリティにおけるAIの未来 - さらなる活用拡大と技術進化に期待

今後2〜3年でAI利用は増加の見込み

本調査では、回答者の80%が、今後2〜3年で産業用サイバーセキュリティにおけるAIの利用を増やす予定であると回答しています。

今後2〜3年での産業用サイバーセキュリティにおけるAI利用拡大の意向 今後2〜3年での産業用サイバーセキュリティにおけるAI利用拡大の意向

この結果からも、産業用サイバーセキュリティにおけるAIの重要性がますます高まっていることがわかります。

AI技術の進化でセキュリティ対策は高度化へ

AI技術は日々進化しており、今後、産業用サイバーセキュリティの分野でも、より高度なAIの活用が進むと予想されます。例えば、AIによる脅威予測や、自律的なセキュリティ対策などが実現する可能性があります。

今後の課題と対策 - 継続的な監視と改善が必要

AIの導入・運用には、継続的な監視と改善が必要です。AIの性能を定期的に評価し、必要に応じて学習データを追加・修正する、AIモデルを更新するなど、常に最新の状態を保つことが重要です。

まとめ

本記事では、Takepoint Researchの調査レポートに基づき、産業用サイバーセキュリティにおけるAI活用の現状、メリット、課題、そして今後の展望について解説しました。

AIは、産業用サイバーセキュリティを強化するための強力なツールですが、導入には課題やリスクも伴います。AIを安全かつ効果的に活用するためには、AIシステム自体のセキュリティ対策、倫理ガイドラインの策定、そして人間による監視体制の構築が不可欠です。

AI技術は今後も進化を続け、産業用サイバーセキュリティの分野でますます重要な役割を果たすことが予想されます。製造業の未来を守るために、AIを賢く活用し、新たなセキュリティの常識を築いていくことが求められます。


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